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日本の政策金融は機能不全に陥っている

現下の経済は緊急的に血液を注入しなければ企業も地方経済も息の根を止められてしまうかもしれない切迫した状況にあります。しかし肝心の政策投資銀行は、「金融検査マニュアル通りですので」と説明されるのです。政府保証や民間金融機関以上の厳しい評価で担保を求める貸し渋り姿勢になってしまいました。そして、その理由を「うちは民間企業ですから利益を出さないといけないのです。」と説明をされるのです。果たしてこれでよいのでしょうか?金融検査マニュアルを理由に、教科書的な融資の方針を説明され、政策金融を担う政府系金融機関としての使命を担うはずの政策投資銀行が民間メガバンクとどこが違うのか疑問に思うこともままあります。

利益を追求する政策投資銀行がJALに貸し出す理由は?

08年以降、リーマンショックで経済状況が悪化し、経済の血液であるお金を早急に民間に貸し出す必要ができましたが、民間金融機関は金融検査マニュアルに縛られていて引当金が必要な債務区分が悪い融資対象企業には融資を行わないので、結局国からの資金で政策融資ができるのは商工中金と政策投資銀行しかないという状況になってしまいました。
利益を追求する政策投資銀行がJALに貸し出す理由は?その時、資本市場から調達できずお金が必要になった大企業は、メガバンクに駆け込んだのですが融資してもらえなかったので、あわてて政策投資銀行に緊急融資をしてもらいました。しかしながら、その半面、われわれのような地方の中堅企業にはお金が政策投資銀行からも回ってこないという状況になってしまったのです。官業の民業圧迫と言って、政策投資銀行の民営化を強力に推し進めたメガバンクのエゴに腹が立ちますが、一番だらしないのは、一貫性がなく、整合性もとらないこの国の政治や経済の指導者たちです。

このように利益を追求する体質に変質した日本政策投資銀行が融資を行う基準からすると、果たして今の日本航空にお金を貸すというのは妥当なことなのでしょうか? 実に、その実態はダブルスタンダードというしかありません。
もし本気で儲けたいと思っているのなら、債務超過と言われ、リスクが高い日本航空などに融資するべきではないはずです。例え80%の政府保証があったとしても、残りの20%は信用貸しのオウンリスクなのですから。

民間企業には貸し渋る政策投資銀行

政策投資銀行は営利企業になったのですから、リーマンショック以後もほとんど大企業にしか融資をしていない状況です。
民間企業には貸し渋る政策投資銀行政策投資銀行は、当社のような地方の中堅企業に対しては、「われわれは営利企業ですから、昔の開発銀行とは違います。利益が出ないと資金調達コストが高くなるのです。政策投資銀行がリスクを取る30%部分には担保が必要です」などと言ってなかなか融資をしてくれません。
ところが国土交通省から指示されると、ほとんど植物人間状態の日本航空に1000億円単位のお金をポンと融資するのです。「日本航空は全国に航空便を運用しているので」という言い訳はききません。なぜなら当社も鹿児島県内の交通インフラを担う企業であり、公共事業者としての社会的存在意義についてはJALと全く変わるところはないのです。

そしてまた政策投資銀行は、政治家や産業界、更には金融界まで、昨今の経済状況に照らして民間企業に対する幅広い政策融資の要望が出ているにもかかわらず、「収益性の高い日本の投資銀行を目指す」という民営化時の目標に取り憑かれていて、積極的に地方の民間企業や、国土や産業の基盤整備に融資しようという姿勢は見えません。開発銀行としての機能はいったいどこに行ってしまったのでしょうか。
今はそんな悠長な経済状態ではないのです。緊急的に血液を注入する政治的な判断が出ている状況なわけです。ところがその出口であるはずの政策投資銀行が、「うちは株式会社ですから」と言って融資をしません。
ここには、政策金融としての機能不全があります。そして、その機能不全を政策投資銀行自身も霞が関の役人たちも、そして永田町の政治家たちも気付いていないのです。

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