岩崎芳太郎の「反・中央集権」思想

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「JALの債務超過状態」をマスコミにリークしたのは誰か

デューデリジェンスを行う場合、通常であれば守秘義務契約を結びます。しかし09年の11月、だれかがこの守秘義務を破り、「JALは5,500億円の債務超過」という報道がなされ株価は大暴落。株主は大損害を被りました。これは公務員であれば刑事罰を伴った犯罪です。見過ごしにはできません。

「5,500億円債務超過」をリークした者は守秘義務違反

日本の民主主義は、欧米のように市民革命によって勝ちとられたものではありませんから、日本の大衆は民主主義に対する理解が十分とは言えませんし、その原点である社会契約説や法治概念になじみがありません。少しゆがんだ民主主義になっているかもしれません。
法治の概念が不徹底であるという事実を、JAL破綻処理プロセスの中に見てみると、JALは自主再建案を作成して国交省に2009年9月24日に持ち込んだのですが、これは即日却下されてしまいました。そしてその日のうちに前原大臣はタスクフォースによるデューデリジェンスを受けるように申し渡しました。
許認可権を持っている国交省がそのような形でJALの経営に立ち入るのは、大臣の権力を私的に行使していることになりますから違法行為だと思います。実際、ロッキード事件の時に、当時の運輸大臣の全日空への職務権限は当然のごとく裁判所で認定されたため、橋本登美三郎大臣は有罪となっているのです。大臣が株主の財産権を侵害しているのです。

「5,500億円債務超過」をリークした者は守秘義務違反それはそれで株主から見ると大いに問題なのですが、さらに大きな問題は、デューデリジェンスを行う場合、通常であれば守秘義務契約を結ぶことになります。「デューデリジェンスの過程や結果として分かったことは洩らしてはならない」という契約を結ぶわけです。
にもかかわらず09年の10月・11月、「JALは5,500億円の債務超過である」「だから、銀行に対して2,500億円の債権放棄を要請する」等の報道がなされました。この金額が真実かどうなのかは置いておいて、許認可権者である国土交通大臣がJALに問答無用で送り込んだデューデリジェンスチームが算定した5,500億円の債務超過という数字は、いったい誰がリークしたのでしょうか? これが私が一番問いたいポイントです。

なぜなら5,500億円という数字が報道されることによってJALの株価は大暴落したからです。これはすなわち「JALは破たんしている」というのと同義語ですから、「JALは既につぶれた会社ですよ」ということを、誰かが守秘義務を犯して言ってしまったということなのです。
さらにその2カ月後には、企業再生支援機構が、「いや、JALの債務超過は8,500億円ですよ」と発表して火に油を注ぎました。当然ながらJALと企業再生支援機構は、デューデリジェンスを行う前に守秘義務契約を結んでいるはずです。さらに言うならば企業再生支援機構は公的機関なのですから、もし企業再生支援機構から数字が漏れたとするならば、公務員の守秘義務違反に当たるはずです。公務員の守秘義務違反は刑事罰を伴った犯罪です。そしてそれによって40万人の株主がその情報流出のおかげで、株価が暴落する前に売却を判断する時間を奪われてしまったのです。結果として、多くの株主が売れないままに持ち続けている株がいずれ100%減資されることで多大な損害を被るのです。しかも会社更生法の申請により株主としての議決権という株式に付帯する重大な権利行使すら、行使する機会をも失ってしまったのです。

「5,500億円債務超過」をリークした者は守秘義務違反当事者たちが「JALは債務超過である」などという情報をマスコミに流す必要など、株主から見ると全くありません。誰かが守秘義務違反をすることによって、JALの株主が被った損害は莫大なものであるということがお分かりいただけると思います。
実に悪質なことであり、株主の立場からすれば到底許すことのできない犯罪です。だれかが責任をとる必要があるはずです。仮に、すべての関係者が、「いいえ私たちは一切情報を外部にもらしておりません。」と言ったとしましょう。その時はもっと最悪です。3大新聞や4つのキー局を含むマスコミ関係者が、「風説の流布」という立派な刑事事件の被疑者となるわけですから。

JALが粉飾決算をやったなら、株主は被害者である

株主として私は、JALの経営者、会計監査人、国土交通省、企業再生支援機構、金融機関といった関係者が、資本主義のシステムの中で法律をきちんと守ってJALの破綻処理に当たったのかどうか知りたいと思います。もし正しい手順でJALの処理がこのような形になったのであるとすれば、株主としては納得するしかありません。それが本来の株主としての責任のあり方です。
しかしもしJALの平成20年度の決算や平成21年上半期の中間決算が粉飾されていた場合、虚偽の有価証券報告書によって騙された株主としては、「JALは巨額の債務超過なので株主責任をとっていただきます」と一方的に言われて、議決権まで取り上げられる筋合いは全くありません。

もしそんなことが罷り通るのであれば、この国は資本主義でもなければ法治国家でもありません。株式会社という資本主義社会の基本ユニットにおいて、株主と会社の関係において、開示すべき情報や会計監査人の役割などがちゃんと法律で定められています。そしてJALのケースの場合はこれらの法律を踏みにじっている可能性があると思います。こんなことではわが国は、株式会社というシステムを前提として経済活動を行っている国としては、日本人をして「法治国家ではない」と言わしめる中国から「日本こそ法治国家ではないのでは・・・・」と反駁されることは間違いなしです。

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