岩崎芳太郎の「反・中央集権」思想

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「地方が死ねば、日本も死ぬ」ことになぜ気がつかない

都会の住人たちは、地方の疲弊をまったく意識せず放置していますが、「地方の危機」は日本の将来に深刻な影を落とす重大事です。地方の疲弊は、日本にとって死活問題ともなる大課題なのです。

日本の全体のネットワークが崩壊し始めている

都会の人たちにとってみれば、地方がいくら疲弊しても何の痛痒も感じないかもしれません。しかしそれは明らかなまちがいです。
小泉竹中改革路線によって、地方は公的セクターからも、民間の大企業からも切り捨てられて、ピジネス効率の良い大都市圏だけに経営資源が集中されています。その結果として、日本の全体のネットワークが崩壊し始めているのです。

日本の全体のネットワークが崩壊し始めているその動きの中で、地方の労働力や、当社のような地方におけるサービスのサプライヤーは、中央資本から徹底的に買いたたかれています。今のところはなんとか持っていますが、それが果たして今後もずっとサステイナブル=持続可能であるかというと、私はそうではないと思います。行き詰まりは目に見えています。
既に鹿児島では10軒以上の特定郵便局が閉鎖されています。なぜならば、食べていけないからです。日本郵政(株)からは「特定郵便局には無駄が多い」と見られていて、委託手数料をコストとして削りとられてしまうからです。日本郵政(株)他4社の収支計画として「本社が当年度は○○億円利益を出さなければならない。」という計画が立てられると、それに従って、独占的な調達者として契約料も一方的に下げてきますし、特定郵便局のコストが計算されてしまうのです。
さらに、郵便公社の時代であれば80億円の利益計上という収支計画はずっと固定のままでもよかったかもしれませんが、民間企業になったら収益は常に向上させていかなければなりません。
したがって郵便会社の、「儲からない地方を切り捨て、さらに地方の人たちを搾取していく」という傾向は、強まりこそすれ減ることはないはずなのです。

また、東京にいるローカルの特定郵便局長なども、郵政民営化の犠牲者であります。彼ら郵便会社からのプレッシャーで、厳しい立場に立たされています。

東京に食われてつぶれる地方企業、商店、搾取される労働者


都市圏の人たちは、「そんなことは自分にはあまり関係がない」と思われるかもしれません。
しかし、こうした形で日本全体の地方が疲弊していくと、都市圏も含めた日本全体がやがてはダメになってしまうということを考える必要があると思います。
現在の地方の疲弊ぶりは、都会人にはどうやら実感できないようなので、マスコミも目先の政権批判や官僚批判を行う傾向が強いようですが、そんなことより日本の地方の疲弊のほうが、日本にとって死活問題ともなる大課題なのです。

東京に食われてつぶれる地方企業、商店、搾取される労働者しかし日本でいま起こっていることの実状をみんなが知ることができなければ、問題を認識することもできません。
東京である程度の年までサラリーマンをやっていて、地方に住んでいる両親の介護のために地方に戻ってきたような人は、今の日本の地方の疲弊ぶりをことさらに痛感するようです。田舎に帰ってからとても困る思いをすると聞いています。
地方の建設業者・土建業者は公共事業を絞られてどんどんつぶれています。彼らがつぶれると、繁華街も寂れます。

中央資本の会社が大規模ショッピングセンターを地方都市の郊外につくり、それによって地方の商店街はどんどんつぶれましたが、東京と同じものが買えるようになりました。地方の人たちも一時はそれを喜びましたが、儲けはすべて東京に持っていかれてしまいます。それでもこれまでは、あまり問題を感じずにすんできましたが、もうごまかしがきかない時期にきていると思います。

当社の場合、5000人いた従業員のうちの2000人を削減し、残った従業員の給料もカットして、やっと生き延びている状況です。当社以外の九州他県の民間バス会社は5、6社つぶれて、整理合理化されています。クビを切られた人は他県に派遣社員として出ていくしかありません。本当に地方は苦しい状況下にあります。
地方に進出してきた中央資本の流通業もこれからは地元資本や中央資本同士でお互いを食い合う時代に入ります。地方の人たちは地方で収入を得て生活をしているわけですから、今後はますます状況悪化の波をかぶることになるはずです。
地方の企業がつぶれて自分の収入がだんだん減り、両親の介護の問題を抱え、「これまでとは何かが違う」という違和感は、問題の根本構造がわかっていなくともほとんどの人が感じ始めていると思います。

東京の地方収奪がいつまでも続くはずがない

東京においても、東京ローカルの人たちは、地方ほどではないにしても、厳しい立場に立たされていると思います。こうした格差的な状況をどこ吹く風と受け流すことができるのは、マトリックスの「中央=官」に近い役人や、大企業の幹部、マスコミ、労働貴族たちだけなのです。

格差マトリックス

商売というのは、「相身互い」というところがあります。
サムエルソンの『経済学』で言えばバターと大砲の話になりますが、一方が一方を永久に収奪し続けるのは無理があります。しかしいま日本で起こっているのは、「中央=官」がそれ以外のセクターから収奪を続けるという構図ができあがってしまったということなのです。中央集権のさらなる強化です。
地方の疲弊は、しかし必ず日本全体の体力を奪って、日本の将来に深刻な影を落とす危機となって現れてくるはずです。こんなことがいつまでも続くはずはありません。この事実から中央にいる人たちは目をそらしてはならないのです。

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