岩崎芳太郎の「反・中央集権」思想

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JAL再建

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税金を出資するなら日本航空は国営に戻すべし

「100%減資」というとんでもない話を強引に進めようとしているのは、JALの資産収奪を虎視眈々と狙っている勢力ではないのでしょうか。自己の利得を図るためにこんな無茶をやっているのです。JAL再建の最終帰結は、機構が出資する3000億円分の資本がどこに行きつくかにかかっています。もっとも公平感・株主の納得感のある結論は、JALを国営企業に戻すことにあると私は思います。

JALの資産をわがものにしたい勢力とは

ひょっとして裁判所決定で会社更生計画の中に「100%減資を強制的に行う」という一行を入れ込もうとしているのかもしれません。しかし、それも株主になにがしかの同意を取らなければ憲法違反になってしまうはずです。
そのくらい、この「100%減資」というのはとんでもない話なのです。それを堂々と書いている新聞や報道しているテレビも不見識としか言いようがありません。
もちろん現在の日本航空の企業価値を落とすわけにはいきませんし、再建のための費用も最小限に抑える努力は払わなければなりません。日本航空が一時的にせよつぶれてしまうようなことになってはまずいわけです。

JALの資産をわがものにしたい勢力とはその一方でわれわれが注意を払われなければならないのは、以前からこのホームページで指摘しているように、「つぶれかけの会社の資産を収奪しよう」と虎視眈々と狙っている勢力がいるということです。そして彼らのやり方はワンパターン、馬鹿の一つ覚えなのです。
しかし、今のところ彼らは日本航空の再建にもうまく絡むことに成功していると思います。そして密室の中で物事を進めようとしているはずです。だからこうした無理な再建策が出てきているわけです。「飛行機を飛ばしながら再建する」とか、「利用者のため」とか、「従業員のため」というのはお為ごかしでしかありません。そして本来の会社のオーナーであるはずの株主は、会社の実態を全くうかがい知ることができず、蚊帳の外に置かれているのが現状です。彼らは株主総会で100%減資の議案が通ることを前提にして再建案を云々しています。資本主義社会においてこのようなことが堂々とまかり通っていて果たしてよいのでしょうか。会社は法的にはエクイティホルダーのものであり、ステークホルダーのものではありません。つまり、JALはJALの株主のものです。

株主の権利だけがゼロにされるなどあり得ないこと

彼らは「銀行が83%債権放棄をするのだから、株主責任のある株主の皆さんは100%権利を放棄してください」と図々しくも株主に迫っています。そんな話には、私は到底従うことはできません。
会社が破たんして清算される場合は、労働債権、金融機関の債権が株主の権利よりも優先されることになっています。しかし日本航空は破綻して清算されるわけではなくて、「飛ばしながら再建する」というところに注意が必要です。つまり、「破たんさせない」ということで関係者の利害調整をしているのですから、株主だけが破たんした場合の論理を受け入れて100%の減資に応じるなどという理由はどこにもないのです。

株主の権利だけがゼロにされるなどあり得ないこと株主に対しては8500億円の債務超過という現状が突きつけられるのであれば、なぜ従業員は50%の企業年金を受け取ることができるのか。銀行はなぜ担保を取っていない貸出の17%を返済してもらえるのか、日本航空のオーナーであるわれわれ株主に対して説明してもらいたいものです。マイレージは簿外債務なのですから、本来的にはゼロになってもおかしくないのですが、これは100%保全されることになっています。巨額の債務超過の会社のやることとはとても思えません。
彼らの権利が保全されて、株主の権利だけがゼロにされるというのは、全くあり得ないことだと思います。
現在提出されている日本航空の再建案は、憲法上の財産権の侵害であり、資本主義や株式会社というわれわれの社会にとっての重要なシステム自体の破壊行為に他なりません。それを企業再生支援機構などのごく一部の利害関係者がマスコミにリークをしまくることによって大きく報道された結果、何でも通すことができるということであっては、決してならないと私は思います。

機構がJALに出資した3000億円の行方に注目

日本航空はデルタ航空との提携を視野に入れています。ここで、一つだけポイントを指摘しておきます。航空業界のアライアンスの話と、資本提携の話とは無関係です。
ANAが外国の航空会社と資本提携していないことを見ればわかるはずです。にもかかわらず、アライアンスの話が資本提携の話にすり替わるところに一連の再建話の如何わしさがあるのです。前述しました通り企業再生支援機構は5年間の時限立法ですから、最長でも5年後には機構がJALに出資した3000億円はどこかが引き取ることになります。
機構がJALに出資した3000億円の行方に注目その引き取り先がデルタ航空であったとするならば、それは外資に日本の貴重な資産を安値で譲り渡すことに他なりません。(NTTやJRの時、公開の公募だった事を思い出してください。国民の財産を国や公的機関が売却する時は、国民全員が平等に取得する権利があるのです。)

そのような愚を避けるために唯一考えられることは、日本航空を国営に戻すことでしょう。それが唯一、国民にとってもわれわれ株主にとってもぎりぎり納得ができるセンだと思います。株主としては1円でも良いので日本航空の議決権利は保持したいと思いますし、しかし、それが叶わない時も、仮に将来、再生JALが増資を行う場合には今の株主は優先的に引き受ける常識的な権利は保持したいものだと思います。どんなに巨額の債務超過の会社だったとしても、その会社を存続させる限りはそれを利用して株主としての議決権を完全にはく奪するということは、資本主義社会においてはあり得べからざることなのです。


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