岩崎芳太郎の「反・中央集権」思想

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法治国家としてJAL関係者に徹底的な捜査、訴追を

日本長期信用銀行の時だけでなく、りそな銀行の時だけでなく、カネボウの時でさえ、産業再生機構の手によって、企業再生というよりは不良債権処理という名のもとの金融資本とその関係による株主よりの富の収奪といったほうが適当と思われる結末を私たちは見てきました。しかし、その愚を繰り返さないためにも、JAL破綻処理を国家的疑惑事件として認識し、監視し、不正を告発し、そして捜査訴追を行わせる必要があるのです。だいたい、カネボウのときでさえ、経営陣や監査法人は然るべき処罰を受けているのですから・・・・・・

長銀破綻処理と相似形のJAL破綻処理策に問題はないのか

繰り返しになりますが、JAL破綻処理がなぜこのようにおかしなことになっているかを考えると、それは誰かがJALの資産を収奪しようとたくらんでいるからであって、そのルーツは日本長期信用銀行の破たん処理に求めることができると私は思っています。
日本長期信用銀行についてもJALと全く同じように、まず債務超過の予見のもとに、何者かの手によってなされた査定で日本長期信用銀行の債務超過が明らかにされ、報道とともに既成事実化し、それを理由に大蔵省が超法規的に日本長期信用銀行の株主の権利を取り上げてしまい、更にゴールドマンサックスをアドバイザーとして日本長期信用銀行に押しつけて公的資金を注入し国営銀行にしてしまいました。これは全く現在言われているJALの破綻処理策と同じです。

長銀破綻処理と相似形のJAL破綻処理策に問題はないのか企業再生支援機構はJALに3000億円を出資する予定ですが、同社は時限立法に基づいて設立されていますから最長で5年後にはこの株を誰かに譲ることになります。日本長期信用銀行の場合はゴールドマンサックスが投資ファンドのリップルウッドにご丁寧にも瑕疵担保責任条項をつけて売却するというところまで決めて、大蔵省の許可を得て長銀はリップルウッドに売却されました。数年後リップルウッドは数千億円という濡れ手に粟の巨額の利益を得ることに成功したのです。

日本長期信用銀行だけでなく、カネボウなども、実際は企業再生というよりは外資または再生のプロと称する人による株主よりの資産の収奪といったほうが適当な結末になったことは、経営の世界においてはだれもが知っていることなのです。そして今またJALで同じようなことが繰り返されようとしています。

郵政民営化を舞台にした違法行為は、二種類の逆のパターンがあると考えられます。まず第一のパターンは売る側に首謀者がいます。そして、その首謀者が国民の財産である郵政事業に対して減損会計を根拠にデューデリジェンスを行い、郵政事業の資産を不当に安く評価し、買い手側にいる共謀者に対して、異常に安い金額で、売り渡したのです。その時にとられた手法の一つが有名なバルク売りという手法です。これによって、郵政事業の資産が、これは国民の財産ですが、一部の関係者に不当に安く収奪されたのです。減損会計で、既に帳簿上の価格が異常に低くなっているので、多くの一般の人はそれで国民の財産が収奪されたのだとすら気づきません。

例えば、問題になった簡保関連資産のオリックスへの払下げ事件。これは未遂だったものですが、固定資産税評価額が856億円の土地・建物等を109億円で売却しようとしたものです。ここにはいつもなぜか公認会計士と弁護士と不動産鑑定士の姿がちらついています。

第二のパターンですが、これは売手と買手が立場がかわるケースです。民営化関連の法律でできた郵便事業(株)という100%の資本を国が持つ会社は360億円の資金(当然、これは国のお金といっていいですが)を使って、郵政官僚の天下り先であった日本郵便逓送(株)他ファミリー企業13社をTOBや、キャシュアウトマージャーという手法を使って、いわゆる(M&Aをして、資本金182億5000万円の日本郵便輸送⑭という100%の子会社を作りだしました。本来、民営化で非効率は親方日の丸体質組織を効率的な事業体にしようとしたにもかかわらず、実際は逆に親方日の丸体質をそのまま郵便事業の本体に取り込んでしまったのです。それだけではなく、実はこの時、このファミリー企業の株の買収価格の決定について、大きな疑惑があります。例えば、240億円以上の巨額な資金を使った日本郵便逓送⑭のTOBについて、1株のTOB価格1,940円を決定するにあたって、中立的な第三者機関で売買価格決定の為のデューデリジェンスさえしていないのです。
長銀破綻処理と相似形のJAL破綻処理策に問題はないのか自社で「修正純資産価格法」という手法を使って、1株2,818円と評価して、それから878円減額した1,940円を自分達だけで決めてしまっているのです。当然、878円の減額には、何の根拠もありません。 つまり、このパターンは、買手側にいる首謀者が、360億円という国のお金で買い物をしようとする時、買う物の値踏みを不正に行い、売り手側にいる共謀者が正しい価値評価と異なる恣意的な価格で即ち不当な値段で、国へ売り付けることを可能にしたというスキームです。それが、高かったのか安かったのかは正しいデューデリジェンスが行われていないのですから、わかりませんが・・・・・

余談ですが、この日本郵便逓送⑭のTOBでは、悪事は意外に露呈してしまうものでおもしろい現象が起きてしまいました。恣意的な値付けが、売り手側の共謀者の彼らさえ予期せぬ違法行為を作りだしてしまったのです。どういうことかというと、38%を所有する最大の株主が元々は国家公務員の共済組合だった郵政共済組合だったのです。そして、この共済組合代表者は日本郵政⑭のトップだったN氏です。共済組合代表者は、自分がトップを務める郵政グループ5社の1社である郵便事業⑭(N氏は同社の取締役でもある。)が、正当な方法で資産査定して一株2,818円の価値があると認めている日本郵便逓送⑭の株を878円も安く、郵便事業⑭に売り渡してしまったのです。この代表者は、1株878円の損害を共済組合に被らせており、これは立派な特別背任という犯罪なのです。

ちなみに、共済組合の所有株式数は522万株ですから、共済組合が被った損害は約46億円となります。郵政の関係者だったら、東京地検に告訴できますし、第三者だったら同じく東京地検告発の対象となります。共済組合の資金を任されていた某金融機関が運用で大穴を開けたため、その大損を穴埋めする目的で共済組合はその株を売却したという噂もあります。
これだけの疑惑をかかえる「郵政民営化」です。地検も当然動いてくれるでしょうし、マスコミが大騒ぎすること間違いなしです。

デューデリジェンスなんていいかげん

私は、JALの5,500億円や8,500億円の債務超過を信じていません。一般のみなさんは、公認会計士や弁護士や不動産鑑定士という人々の、コンプライアン意識や倫理観を絶対的な安心感をもって認めてしまいがちなので、そんなとお思いになるかもしれません。しかし、私自身の実体験や、見聞きしたことをお話すれば、少しは私の持っているJALの債務超過に対する違和感をお分かり頂けると思います。

まず、見聞きしたことからお話しします。鹿児島市の一番大きなホテルが、私的整理にあった時です。そこが所有するゴルフ場のデューデリジェンス上の評価が、800万円と聞きました。ちなみにそのゴルフ場はパブリックでしたので、返還義務のある預託金はゼロです。それでも800万円の評価です。理由はそこのゴルフ場の敷地が自治体からの借地であることと業績が赤字であることです。当然、クラブハウスも含め数十億円の建設費がかかっています。結局、100%減資の後、銀行の資本が注入されたそのゴルフ場は20数億円でファンドに売られました。

そこのホテルが福岡市の一等地に2~3000坪の土地を所有していました。そこはデューデリジェンスで20数億円の評価だったと聞きました。そこも数ヶ月後、80億円で売却できたらしいです。
実体験をお話します。我が社も、金融機関の要請を受けて、デューデリジェンスを行なったことがあります。行なった監査法人は今は四大監査法人の一つで業界No.1といわれるT社です。当時、我が社は銀座の超一等地に、ビルを所有していました。敷地は50坪ぐらいでした。デューデリジェンスの評価は約24億円でした。当然、不当な廉価です。それから数ヶ月後に、我が社はそこを売却しました。売却額は約90億円だったと思います。

我が社の社有地の1つに沖縄の那覇市に隣接する豊見城市にある豊見城跡をメインとした約8万坪の未利用デューデリジェンスなんていいかげん地があります。ここはたった8億円の評価だったと記憶しています。固定資産税評価額が40億円ぐらいです。優良な第一地銀へ担保として提供するために取った不動産鑑定評価額が当時で40数億円あったと記憶しています。我が社は、フジ系のローカルテレビ局の大株主です。そこの株価は、前出の「修正純資産価格法」で評価すると1株18,000円です。これも金融資本主義的デューデリジェンス方式でいくと、約2,000円となります。
我が社は、こういう収奪目的型デューデリジェンスのリスクに対して、それを予見していましたので、独自に依頼した弁護士、公認会計士、不動産鑑定士の協力を得て、事前に対抗策を準備し、徹底抗戦を行ないましたので、債務超過を創作されないで済んだため、この時の危機も何とか乗り越えることができました。

今、日本で行なわれているデューデリジェンスなんて、こんなものだと思います。悪く言えば、デューデリジェンスなんて公正で、中立を装うが、実は金融機関などの大口クライアントの言いなりの見かけだけの第三者機関の恣意性で、上にも下にもどうでも創作できるものなのです。特に物の価値を賤しめる方には意外と簡単なものなのです。もう一例御披露すれば、我が社が種子島に所有するホテルの件が、デューデリジェンスの恣意性を認識できる模範例でしょう。このホテルはJAXA(宇宙航空研究開発機構)の種子島宇宙センターの隣にあったため、ある経緯があって、JAXAが購入を希望しました。結果的には、ある事情により破談になったため、我が社は目下、損害賠償の訴訟を準備中です。
破談になった理由は、我が社は固定資産評価額(約10億円)以上での売却を条件に交渉を開始しました。相手も、それを了解したため、不動産鑑定を実施することを了解し、鑑定を4ヶ月もかけて行ないました。なぜかというと、JAXAは公的機関なので、不動産鑑定を行なうことが義務付けられているからです。
鑑定評価は、日本でも有数の権威財団法人N社で行なわれました。その鑑定結果は、固定資産評価額の約半分でした。我が社は、その3年前、N社に鑑定評価を依頼し、その時の結果は14億円だったのですが、ちなみに、我社のホテルの敷地は2万000坪です。建築費など上物に対する投資総額は50億円近くです。

私は、このような結果にならないように、JAXAには収益還元法での評価は行なわないことと注文をつけていたのですが、彼らは我が社のホテルの価値を意図的に賤しめるために収益還元法を使ったとしか考えられません。もちろんJAXAはその物件を購入して、ホテル事業をするわけではないのです。
さて、話をもどします。JALの債務超過!しかも資本を全額食いつぶす巨額の債務超過!だから私はイマイチ信じていません。でも、残念ながら株主であってもそうじゃないことを確認することはできないのです。それでは、債務超過を前提として、少なくとも、たった数カ月で債務超過でなかったはずのJALを数千億円の債務超過とし、会社更生法を申請せざるを得なくした関係者の人々(JALの経営陣、監査役の人々、監査法人、そして、できれば国土交通省関係者)には、然るべき責任をとってもらい、処罰を受けてもらいたいと思います。もしくは、その人たちの中で、「否、JALはそんな巨額の債務超過でない」という人たちがいたら、その人々は正々堂々とJALを債務超過にした人々と戦ってもらいたいと思います。

「いつか来た道」

JALの処理は、少なくとも40万人の株主のいる企業でなされるにはあまりにもひどいやり方だと思います。
JALのケースでも、小沢氏の政治資金報告書虚偽記載のケースと同様に、違法行為を行った関係者については徹底的な捜査を行い、訴追を行っていただきたいものだと思います。
私としては、誰かが告発しなければ、捜査機関が動いてくれないのかという思いはあります。しかし私のような視点からJALの破綻処理プロセスに疑念を呈する人はあまり見たことがないですし、そのような話はメディアにも出てきていません。ですから私がやるしかないのでしょう。
例えば、小沢氏を悪質な犯罪者としてのイメージを大衆の中に作り出しそれによって「国益を見据えた大義」を実現することなく「趣味的な正義」を行う一部の捜査関係者やマスコミの手法を見ていると、どこかしら二・二六事件以降日本を破滅的な戦争に駆り立てていった大衆扇動型のファシズム国家への流れに共通するものがあるように思えてなりません。

「いつか来た道」日本では法律は文章としては存在するものの、その正しい執行ができていないように思います。むしろ法律を恣意的に運用執行しているところにこの国の不幸があるのではないでしょうか。
日本が法治国家であるならば、JAL破綻処理や郵政民営化における違法行為を決して見逃しにせず、必ず不正を行った人間を法治の下で処罰しなければならないと私は思います。
「公共工事」、「談合」、「政治家」、「贈収賄」、このキーワードに係わるアンティークな悪事に対する訴追、弾劾をするなとは言いません。でも、郵政民営化プロセスに見る最新型の悪事や不正に対して、そういう悪事や不正が多くの日本人を不幸にし、国益を損なっているということを考えた場合、現在の日本の社会は鈍感すぎるというか、見逃しすぎるというか、本当に日本をよくするためには絶対に、放置してはならないと思います。あえて、申し上げれば、私は正義はキリスト教徒、それとイスラム教徒のそれが異なるように、人によって、立場によって異なるということを考えた場合、絶対的な正義はないと思います。そういう意味で、この国のマスコミが声高に唱える正義の半分は偽善的に思えてなりません。今、日本が実現しなければならないものは、日本人らしい倫理観に基づく大義ある社会ではないでしょうか。そういう意味で、郵政民営化関連で、JAL倒産事件で、その不正について何人も、まったくそれを問われないとしたら、この国の真の再生は不可能と考えるべきでしょう。

JALの株主の皆さんの一人一人が、もし私の拙見に触発されて、大義実現のために、一人ひとりが何がしかのアクションを取って頂いたとしたら、司直も動き、マスコミも、偽善的な日和見的な報道姿勢を改めて、正しい世論が形成されるのではという期待を表明して、今回分を終えることとします。

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