JAL再建

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「100%減資」は憲法違反だ

金融機関は17%の担保で保全されていない債権をJALから回収。企業年金は50%、マイルは100%を保全。JALが「○○千億円の債務超過」であったら、法的にこのような不公正な返済計画はできません。それなのに、株主の権利はゼロに。JALを清算するわけでもないのに、なぜ善意の株主の権利が無条件に剥奪されるのでしょうか。こんなことが罷り通っては、日本の会社制度自体が成り立たなくなってしまうでしょう。

「株主責任」なんて、インチキな作り出された概念だ

テレビのニュースショーを見ていると、日本航空再建策について、事情などわかっていなさそうなアナウンサーが、「銀行は日本航空の債務をカットするのだから、株主も株主責任をとって100%減資を受けるべきだ」などと言っていたりします。
「株主責任」なんて、インチキな作り出された概念だ私は、「株主責任」という言葉は初めて聞きました。株を持っていない人はなんとなく聞き流してしまうかもしれませんが、株主責任などという経営用語はありません。
「れっきとした監査法人が適正とした監査報告書をつけた事業報告書を信用して株主総会の議案を通した株主がバカだったのだから、その責任を取れ」ということなのでしょうか。そんなバカな話は聞いたことがありません。
近年、ファンドによって取りつぶされてきた地方企業のオーナー経営者が経営責任を問われて100%減資を受け入れるという事例は少なくありませんでしたが、それは株主責任ではなく経営責任をとらされたのだと思います。日本航空は資本と経営が分離した大企業ですから、40万人の株主は「日本航空の自主的な再建を支えたい」と思って、一生懸命株を保持し続けた人たちなのです。その人たちが「株主責任」なるものを問われるというのは、いったいどういうことなのでしょうか。その法的根拠が、「会社更生の申請」と「債務超過」であるとしたら、この国は法治国家でもなく、資本主義経済でもなく、株式会社のシステムを否定するものであります。

株主に断りなく「100%減資」など不可能

その上、呆れたことには、金融機関は担保保全されていない融資の一律83%=7300億円の債権放棄を求められることになっています。どうやら企業再生支援機構と銀行団の間でそれで合意に達したようです。しかし担保のある部分は銀行はさっさと回収してしまうわけで、債権放棄をするのは日本航空の信用に貸していた部分でしかありません。本来であれば信用貸しの部分はまったく回収できなくてもおかしくないのに、日本航空に融資をしていた大金融機関は担保がなくても17%を回収できるという驚くべき合意なのです。これら銀行団はJALの大株主でもありますので、この行為は特定株主の利益供与でもあるわけです。
株主に断りなく「100%減資」など不可能企業年金も、どういう基準で決められたのかわかりませんが、「OBの2/3が減額に同意した」という不可解な理由で50%が保証されるということが、株主には何の断りもなく決定されてしまいました。それに比べて株主には「有無を言わさず100%減資を受け入れろ」というのが企業再生支援機構が通そうとしている日本航空の再建案です。こんなインチキが罷り通るとは考えられないことですが、メディアは何の違和感もなく受け止めてこれを報道しています。
ではなぜ彼らは既存の日本航空株の100%減資にこだわっているのでしょうか。それは100%減資をしてそれまでの株主を一掃してしまわないと、その先に増資したり、日本航空を自分たちの好き勝手にすることができないからなのです。
しかし「資本金ゼロ」の会社は会社として存続できないし、株主総会も開けません。資本金が一時的にでもゼロになるということは許されないのです。ですから普通は新しい株主を見つけてきて増資するのと同時に減資を行わなければ、100%減資はできないわけです。日本航空には企業再生支援機構が「3000億円を出資する」と言っています。しかし100%減資をするには、株主総会での3分の2の株主の賛同が必要です。40万人の株主のうち、そんなばかげた議案に賛成する株主がいったい何人いるというのでしょうか?

株主の議決権剥奪は「憲法違反」

私には、どうも日本航空再建案をマスコミにリークしている人たちのやり方は、日本人一般が企業再生について不勉強なのをよいことに、先にメディアを通じて勝手な情報を流すことによって、本来資本主義社会においてはあってはならないような状況に誘導しようとしているようにしか思えません。
彼らの理屈はこういう部分でも間違っていることがわかります。「日本航空は大幅な債務超過の会社なのでこれ以上もちません。ですから思い切ったリストラをしてなんとか会社を存続させましょう」というのが今回の法的整理なのです。

株主の議決権剥奪は「憲法違反」日本航空を破産させて清算してしまうというのであれば100%減資も受け入れる必要があるでしょう。それは、会社がなくなって単に株が無価値になるだけの話です。しかし今回の再建策は、法人としての日本航空は存続し続けるわけですから、「債務超過なので株にほとんど価値はない、したがって現在の株主の1株当たりの権利を議決権だけにする」というのであれば株価は1円ということになるはずです。それ以下ということはあってはならないことのはずです。
つまり「100%減資」というのは、日本人の無知につけ込んで株主から議決権をはく奪するためのキャッチフレーズなのです。まさに財産権の侵害という憲法違反であり、そんな恐ろしいことを日本航空再建策として強引に通そうとしているのが現在の状況なのです。
法的に見ればまったくおかしな話が現実化しようとしています。実に異常なことです。

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