「傍観者は正」という態度はおかしい
「不正を知っていたとしても、自分が関与していなければ罪はない」という風潮は改めるべきです。自分がらみの刑事的な違法行為も積極的に告発しましょう。
労務問題はもはやタブーではない
労務問題の裁判は、判例主義に則ると使用者側が敗訴するケースが多かったのですが、最近は勝てるようになってきました。
労働基準監督署も古い体質であり、かつ刑事罰が課せられますから、使用者側はとても警戒しています。でもグローバルスタンダードが入ってきた現代では、監督署の職員の私的な法解釈によって、違法な行政指導が行われたり、刑事罰をちらつかせて使用者側を脅すというのは、許されないことになってきていると思います。
ところが、ほとんどの経営者は闘うことができません。みんな泣き寝入りです。
私は行政手続法や独占禁止法について、われわれなりの厳格な解釈に従って闘っています。そうすると役所のほうも隙あらば闘いをしかけてきます。当社は、そうした闘いを何とかしのいで役所の言いなりにならずにすんでいます。
すべての人に「そうしろ」と言うつもりはありません。しかし全員が長いものに巻かれていたのでは、この国はよくない方向に向かってしまうのではないでしょうか。ある程度よくない方向に進んでしまったら、それまで「長いものには巻かれろだよ」と思って私の闘いを傍観していた人たちも、「しまった!」と後悔することになると思います。それでは遅いのではないでしょうか。
そして今でももうすでにそのような取り返しのつかないことは、多々起こっているのです。
何でもかんでもやみくもに「刑事告発しろ」というわけではありませんが、社内の違法行為については、経営側がしっかり法的な対処をする必要があると思います。また世の中でまかり通っている違法行為についても、自分の利害のありなしにかかわらずかかわり合う必要はあると思います。
不正を見逃す管理職は「善管注意義務」違反
社会保険庁にしても、他の組織にしても、すべての組織内の犯罪の温床になっている思想があると思います。それは「傍観者は正」という考え方です。
日本では、もし不正を行っている者を知っていたとしても、自分が関与していないのであれば、告発をしなくても問題はないとされているわけです。「なんとなく不正があることを知ってはいたのですが、私はそこまで踏み込めませんし」という言い訳ができるようです。
また訴追機関にしても、横領や窃盗については動くのですが、背任や特別背任については、「個人的な利益がなければ訴追しない」というおかしな基準があるらしく、そうしたこともこの風潮を助長していると思います。
しかし企業の管理職が善管注意義務や善管報告義務を怠るのは、絶対にあってはならないことのはずです。管理職であれば、不正を見逃すことは、あってはならないことなのです。
告訴・告発は、捜査機関に具体的な刑事事件を申告し処罰を求める行為です。また、刑事事件を前提とした損害賠償請求もある種の告発だと思います。
一例ですが、私がいわれなき誹謗中傷を受けて、相手を告発したケースがあります。
私の場合は、ただ警察や検察に告発状や告訴状を出すだけではなくて、広い意味で民事を含めて考えています。このケースの場合では、虚偽の告発という刑事犯ですから警察に告発しました。しかし警察に受け付けてもらえなかったので、先に名誉棄損の損害賠償請求の民事訴訟を行いました。その民事訴訟において刑事事件としての構成を持つ判決を勝ち取って、その判決を持って、警察に動くように働きかけています。
本来であれば警察検察という訴追機関が動くべきなのに、彼らの動きが鈍いのであれば、告発状、告訴状、被害届を訴追機関に出しておいて民事事件から入って彼らを動かそうという考え方です。時間はかかりますが。
「告発」というと、第三者が告発するようなイメージを持ちがちですが、自分がらみの刑事的な違法行為を追及することも、できる立場の人であればどんどんやるべきだと思います。