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失敗の見えていた「郵政改革」を推進した力学とは

その2 郵政民営化に組み込まれた「私物化」の数々

     ジャーナリスト 町田 徹氏 

小泉さん「郵政憎し」の理由

町田 一方小泉家は、小泉純一郎さんのおじいさんの又次郎さんの時代は、三浦半島の元祖郵政族だったんですね。神奈川南地区に80以上ある特定局のネットワークを作ったのは又次郎さんだったんです。
 又次郎さんの養子の純也さんが亡くなって、小泉純一郎氏がロンドンから急きょ帰国して選挙に出馬したときは、これらの特定郵便局が全員応援してくれなければならなかったはずなのに、そのうちの2割くらいの郵便局が裏切って、当時とても人気があった田川誠一さんについてしまいました。横須賀でも北部の地域は田川さんについてしまったので、小泉純一郎氏は3000票程度の差で負けてしまいました。もし特定局の裏切りがなければ、彼は勝てていたはずなんです。その怨みが、小泉さんの政治のスタート地点にあるわけです。
小泉さん「郵政憎し」の理由 その後小泉さんは、福田派ですから大蔵族になり、大蔵省vs郵政省という形で対立が続きます。宮沢首相はその対立を利用しようと思って小泉さんを郵政大臣にしたら、就任した直後に郵政官僚と衝突して、郵政省の官僚は小泉さんに国会の質問すら教えないような嫌がらせをしたそうです。  意趣返しを繰り返し合った結果、小泉さんは「郵政憎し」という私憤を募らせ、「なんとかして世襲の公務員制度である郵便局の仕組みをぶち壊してやりたい」と考えていたと私は考えています。そして「郵政に手をつけるチャンスは、自分が首相の時にしかない」と考えていたのだと思います。そうした事情は2005年に出版した著作(『日本郵政―解き放たれた巨人』日本経済新聞社刊)でも述べています。

岩崎 ええ。

町田 しかし肝心なことについて、つまり「ではどのようにすればよいのか」というアイデアを、小泉さんはほとんど持っていなかった。ここに大きな問題があるのです。
 そこに登場してきたのが竹中さんです。竹中さんや他の省庁の官僚が中心になってアイデアを出し、郵政民営化を進めたわけですが、結果としてできあがった郵政民営化というのは、おそらくは特定の人たちが郵政の資産を私物化して、私腹を肥やすような仕組みになってしまったわけです。
 例えば、かんぽの宿の払い下げは、完全な出来レースがあちこちで仕掛けられていて、よくても特別背任罪を、ひょっとしたら贈収賄を疑わなければならないようなたたき売りが行われました。同じようなことが、三井住友カードとゆうちょ銀行との提携でもありましたし、大手広告代理店との契約の仕組みにもありましたし、JPエキスプレスとの提携問題にもありますし……枚挙にいとまもないくらいの私物化の仕組みがそこにはあります。

松原委員会が出来レースだったのは当然だった

町田 そのひとつに、郵政ファミリー企業の整理問題があります。旧日本郵便逓送㈱を中心にしたファミリー企業の統合化というのは、どう考えても不合理であり非効率なものです。これは松原聡東洋大学教授を座長とする松原委員会で決まったことですが、松原さんというのはそもそも郵政民営化問題以前から全逓の御用学者と目されていた人なんです。

岩崎 そうなんですか!

町田 その松原さんと竹中さんがやったのが、全逓の影響力を強く受けていると言われる日本郵便逓送㈱を温存するファミリー企業の整理案だったということです。これもまた壮大な私物化のひとつ、換言すれば、全逓の権益保護だったのではないかという印象を免れ得ないでしょう。
 これについては、総務省も、郵便事業㈱も、今になって問題視していることではあるんです。取材をすると、総務省幹部の中に、九州だけではなくて、北海道や北陸でも簡単には1本化できない、あるいはしてはいけない問題があって、早期の見直しが必要だと考え始めているようです……

岩崎 北海道郵便逓送㈱です。戦時統合でできた会社なので民間企業が株主になっています。この会社と同じく、北海道高速郵便輸送㈱の2社は日本郵便輸送準備㈱に株を売ってファミリー企業側に入ることを拒絶して、日本郵便輸送㈱から仕事をもらう立場を選択しているようです

町田 私の取材の結果わかったことは、総務省も、郵便事業㈱の一部の経営陣も、日本郵便輸送㈱を中心としたファミリー企業の一本化では合理化のインセンティブが働かないという問題意識を持っているということです。むしろ、複数の輸送会社を入れて競争させた方が、ムダの固まりのような日本郵便輸送㈱に合理化を目指すインセンティブが湧くのではないかと考えているのです。だからこそ、このまま問題を放置してよいとは思っていないようなのです。



町田 徹(まちだ てつ)氏 http://www.tetsu-machida.com/
経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。 1960年大阪府生まれ。
神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒。米ペンシルバニア大学ウォートンスクールに留学。
甲南大学経済学部非常勤講師。
日本経済新聞社における18年間の新聞記者時代に、金融制度改革、郵貯肥大化問題、放送デジタル化、通信回線の接続ルール作り、NTT分離・分割問題、米1996年通信法改正、日米通信摩擦、米金融政策、米インターネット振興策などを取材し、多くのスクープ記事をものにする。  雑誌編集者を経て独立し、雑誌への寄稿や講演活動も手掛けている。




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